「愛は闇のかなたに」感想

「愛は闇のかなたに」感想/二見書房
L・J・シェン著

 今回はネタバレある上好意的な感想がほぼ無いので、ご注意下され。あと今作ヒーローが素敵だと思った方は読まない方がいいです。
 そもそもこれツイッターで、読んで面白かったという内容が多かったので入手したんで、世間では評価高い方だと思うんですよ。なんで今回の感想は「まあそういう考えの人もいるのね」くらいに流して下されば幸いです。
 あとここは自分が今後本を買うときに、過去に同作者で読んだかとかも調べたいために記録してるんで書かないという選択肢も無いのもご了承下され。

 それはまあさておき、感想なのですが。
 すっごい久しぶりに全部読めなかった。このブログ書き始めて過去に一作だけ(だったと思う)全然面白いと思えなくて途中で投げた作品があるんですが今作はその投げ作品二作目になりました。でも一応途中から最後までパラパラとめくって要所要所だけ読んだんで、だいたいの筋は分かっております。
 で、そのだいたいの筋自体はすごいいいと思う。展開も良かった。
 何があかんかったかというと、ヒーロー。
 とはいえ、しょっぱなのヒーローの登場シーンとか、実はめちゃめちゃハマりまして、うおおおおおおすげえダーク!ダークヒーロー!来たああああ!超クール!とか相当テンション高めで読んでました。帯にある通り、これはかなりダーク&危険系ヒーロー!個人的にそんなに接してこなかった系統なんで新鮮さもあってノリノリで読んでたんですがね。
 だんだんと、三分の一過ぎたくらいからなんかこう、「このヒーロー、結構抜けてんな」と思うようになって、最初の鮮烈な登場とヒロインとの初夜辺りまであった暗黒界を闊歩する隙の無いヒーロー像のメッキが剥がれてきた?のかな?行動に庶民的というか小物感が漂うようになってきた気がしてきて。ヒロインのボディガードを解雇した部分では野蛮さを出したかったの?分からないけど、単に理不尽にキレてるようにしか思えず、そこでかなり萎えてたんですが、最終的にヒロインに尾行されてんのに気付かず、ヒロインの仇敵と握手して交友的っぽいシーンをヒロインに見られた時点で完全に折れました。
 全く格好良くない。むしろなんかそんな抜けっぷりで父の仇とか取るつもりなん?それでこれまでの罪を逃れてたん?ってなりまして。ヒーローの有能さとか全く説得力無えな!って思って、そこからざっと読みになりました。
 てなもんでだいたいのあらすじも理解したし、構成としてもいいと思う。ラストの、ヒロインがヒーローの罪を知りつつ苦悩して、そしてあのラストを選んだってのもすごい個人的にはいいな!と思った。あとヒロインの設定も性格も好き。ただ今回は所謂「Not For Me」であったと言うのだろう。むしろ題材としては大好物なんでハマりたかった。残念。

ファミリー憎愛極まれりな一作。

「白銀の墟玄の月」感想

「白銀の墟玄の月」感想/新潮文庫
小野不由美著

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※ 今回はガンガンのネタバレで参ります。

 「図南の翼」にて利広が頑丘に「──そして、王はその世界を制するゆえに、その理屈を踏み越えねばならない」と曰った場面がありましてね。読んだときにそれはもう鳥肌ものだったと、今読み直してもはああああとしびれてしまう十二国記シリーズ名台詞の一つだと信じているのですが。さて、今回の十二国記最新刊にて、読了後に思い出したのは上記の台詞だったんです。そして小野先生が小野主上と呼ばれるのは、これは単にこの十二国記の生みの親であるだけでなく、この作品にて見事「民(読者)の想像を王(小野先生)が越えてきた」と、そういうところやでと、叩頭してしまうでこれは、と思いまして。
 いやもう、なんといっても泰麒、さんざ化け物やろって言われてきた泰麒。もともと黒麒でおおいなる可能性を秘めてましたってのはさんざん描写されてきてましたが、今回はシリーズを通して麒麟に対しある制約を、シリーズでもうこれでもか!これでもか!と植え付けてきた麒麟の特性を全部超えさせる説得力とカタルシスよ。しかも完全体でないのにそれでもせざるを得なかった泰麒の強さと心情を思うと、すっとすると同時に泣けてきますよねえ。でもって絵面?見せ方?盛り上げ方がもう神の領域ですよね。同じ感動を最近ノーラ・ロバーツ読んで感じたんですが、かなりえげつない過去とかあっても作中でこう、カーブでなく明らかな段階を踏んで事態が好転してるのを目の当たりにするの、本当にいいですね。読んでいて気持ちがいい。なんというか頂点に立つ創作者のそういう表現とか、同時代に読むことができて本当によかったなあとしみじみ感動しましたわ。
 この十二国記にて、陽子さんはあえてなのか、序盤でものすごい悩んでいたものの、王として立ったら蓬莱への思いの描写が全くないのよね。誰とも上手く仲良くなれなくて、息を詰めて暮らしてて、なので回想するようなお友達も(小説版では)いないのかも知れない。要君も同じなんですが、彼はさらに過酷な経験をしたけれど「先生」がいて、唯一のよりどころだったかの人を思いつつ、さらに苛烈な道を進む要君の心情がさあ……。もうね……。あの「魔性の子」があってそしてこのたびの「白銀〜」があって、あの十歳の可愛らしい黒麒麟の面影をもう一切消して冷淡に狡猾に生きねばと決心させたのは、戴の国の民と蓬莱での出来事がってのでさ……今までの麒麟像を覆すことになっても読者もこれはしゃあないと納得させる、とむしろ泣きたくなる豹変ぶりでしたね。
 あとねえ……ほんっと素晴らしいのよ……やっぱ本性は麒麟なんで慈悲もあるんで、阿選に対しても基本冷酷ではあるものの、なんかこう完全に牙を向いてるワケでなくて、でも所々で驍宗様至上って台詞をしれっと仰るのよ泰麒がね……萌えだろ……萌えるだろそれは……。なんなんだよもう……。最高か……。

 でもって阿選ですね。なんといいますかね。おそらく私には一生縁のない負の感情なんですが、それでもうっわ分かる……と思わせるんですよまた。なんとなく思い出したのは平成の歌姫と呼ばれた某お二方でして。お二人とも非常に才能ある歌手なんですが、一方が先に出たことで片方が「真似」とか「パクリ」とか言われる空気、あれはいかんですよね。二人共を潰すことになるよね。個人の見解ですが、ひとつ突出したものが出てきたら、それに感化されたり呼応されたりで同等の力を持つ者が現れるのはむしろそういうものじゃないかしら?と思っている。
 それはさておき。てなもんで驍宗様に思うところありすぎた阿選さん、これまた途中でどこで道を違えたの?ってのがこうガッツリ描写されててさあ、こっちもすっとするのと同時にあ〜って、なんかこうあ〜って、思わず目を閉じてしまうような、こう無念……って感じがありました。私はこういう悪人がなぜ悪人になったかとか見るの大好きでさあ……そういうことでも今作はやばかった。

 まだ言い足りない気もしますがまずがこの辺で。ところで最後の最後でさらっと「阿選を討つ」って記してあって。え、続き、出ないの?もうこれで戴編は終わりなの……?ってめっちゃ動揺してます……。え……。

至上最凶麒麟爆誕な一作。

「ガラスの中のシンデレラ」感想

「ガラスの中のシンデレラ」感想/ハーレクインロマンス
アビー・グリーン著

 仕事のできる残念男子が好きな私は、過去に辛いことがありすぎていろいろ面倒くさいことになってるヒーローが出るだけで、なんというかもう「ごめんなさいねえ私のためにわざわざ」とか思ってしまう。ということで今回もクッソ面倒くさく拗らせてるヒーローがヒロインを見初める話です。
 そもそも出会いが好き。ベタなんだけど好き。いや王道は良いよ。それだけ愛されてるんだからね。黄金比と一緒やで。てなもんでヒロインのディスプレイから、幸せだった頃を思い出したヒーローが、なにげにヒロインに声をかけるんだけど、ヒロインの方は「お前かよ!」と実は既知で、でも何故ヒーローがヒロインのことを覚えてないかつったら、それはきちんと理由もあって、そこも伏線なんですわ。遊び人にみせかけ実はかなり誠実なヒーロー。でも下心だって皆無じゃ無いぜ!そこはロマンス小説なんで押さえているんだぜ!ということで一つ屋根の下に住むことになった両者。……なんだよこれ大好物じゃねえか……ってウハウハでした。
 ちょっと前に生殖能力を失っていると勘違いしているヒーローの面倒くささを延々と語った記憶もまだ新しいんですが、この度の内容はその変化球版とでも言うのか。まあしかしヒーローに対してヒロインの陰の籠もらなさよ。ここにも性差が出てて、こういうのはこれでものっそい興味深いんですが、とりあえず物語の感想を書きます。で、結果として

 やっぱり面倒くさい。

 なんなんだよヒーロー……そこまで拗らせてるんだったらそもそもヒロインのこと信じずにテメーが率先してきちんと対応せえっつうの!
 信じたくせに「信じた俺が馬鹿だった」とか言うなそこまで言うなら何故そうなったか聞いてやれ!とも思いつつも、まあ頭に血が上った人間なんてこんなもんだよね、とも思う。大前提としてヒーローも過去に傷ある男だから「またか」的なところもあったし。
 いやでも冒頭でも言いましたが、仕事ができる残念男子が好物なんで、今作も非常に楽しみました。一足飛びにギャー!て怒ってしまっても、のちにきちんとごめんなさい、って言えるのは素晴らしい。

子供欲しくない!とか言いながらヒロインと自分との子供を妄想して恍惚としてしまうまでがワンセットな一作。