「灼熱の王と美しき逃亡者」感想

「灼熱の王と美しき逃亡者」感想/ハーレクインロマンス
アビー・グリーン著

 さすがに今回のタイトルは若干盛ってる感が拭えないですが、まあ逃亡者ですわな。てか二人ともある意味逃亡者でしたね。
 ということでこないだのシークもの「孤高の王のあやまち」のスピンオフです。前作から「はいっこの人次のヒーローですよ!これ試験に出ますよ!」という登場でして、その前作ですでにダウナーな雰囲気漂わせてましたけど、ヒーローになっても案の定アンニュイ。ヒロインがしっかりせえ!(超訳)ときれることしばしでした。ヒロインの怒りも分からなくはないですよね。能力も資格もある人がしばらくはやってもいいけどもっと正式な後継者が出たら譲るんで!て言っててヒロインが失望しちゃってるパターン。なんかどっかで見たことあるなって思ったらアレだ十二国記の短編でも見たことあるやつやなって思ってヒロインのイライラに思わず共感してしまう。
 まーそんなんで、ヒロインはヒーローに惹かれつつも、なんでそんなにダウナーなん?て秘密を暴きつつ傷を癒しつつ、己のトラウマもなんとかしてしまうという私が大好物なパターンなんでまー今回もニヤニヤが止まらなかったわけですが!
 前作にちょろっと出てきたエピが今回では重要になってて、個人的にはそういうのも好きなんで美味しかったです。
 あとあれだね。アビー・グリーンさんはフェチをくすぐるのが上手いね!脱げたヒロインのパンプスを履かせるヒーローの絵面!最高!最高か!好き!いっぱいちゅき!と萌えで殴られて本望です!アビー・グリーンはアルゼンチンタンゴとかビリヤードとかバイク二人乗りとかいやもうね!がっつりツボを的確に突いてきてさすがですね!

イベントが辛くなるのぼっちにはあるある過ぎてちょっと辛かった一作

「激動の時代のなかで」感想

「激動の時代のなかで」感想/マグノリアロマンス
ローズマリー・ロジャーズ著

 みなさんお待ちかねローズマリー・ロジャーズのヒストリカルです。今回は南北戦争直前〜戦時中のアメリカが舞台。元気いっぱい天真爛漫ヒロインが歴史とヒーローに翻弄されながら成長していく大河ロマンスでした。
 そう、みなさんご存知!ローズマリー・ロジャーズのヒーローといえばはんぱない握力でヒロインのボディスを高確率でビリってくれる彼です!今回もしょっぱなからもう野性味溢れてこれはかなり破るぞ期待できるぞきた…「ビリー」
 はっや!!!!!!!!
 ちょっと今回はもう多分最短記録なんじゃないかなってくらい速攻破いてた!訳者さんのあとがき読んだら言及されててめっさ笑った!ですよね!ローズマリー・ロジャーズつったらこれよね!!!

 まああてなもんで舞台がアメリカに移ってもヒロインとヒーローの特性は通常運転でファンとしてはよき!よき!と息巻いて読んでおりましたが、すっげえですわ。ほんと大河というか激動というか起伏が激しい。あとヒロイン兄のクセが強い!……ってそんなあっ軽いレベルの問題では無かったんですけど、兄キッツイ。こういう系(キャラとして)苦手なんでんきゃああああ(瀕死)〜って読み進めてましたけどね。進むにつれこの人立てるんですよフラグを。いわゆる「ええ死に方しない」フラグたてまくるんですよ。それはそれで辛い。しかし一方で出てくるカタルシス。人間って業深いよね。
 でもってヒロイン。うん。物語を進めるためにはしゃーない。しゃーないんだけど、さあ……ちょっと後半の行動は考えなし過ぎて引いた。いや話を盛り上げるために絶対必要な行動よ、わかるの。理性ではわかるんだけどさあ……なんでそこで、この時代設定でそこまで向こう見ずになれるかな……てな部分で相当引いた。いやでも終盤のあれ見るためには必要。わかる。わかルパン3世(ツイッターで人様がバズったネタここでも使う)。とか言いながら、主役二人のケンカップル具合は非常に楽しかった。それもあってさあ、あの行動はアリっちゃーアリでさあ。
 あと今回、非常に切ない胸毛描写があって泣いた。あんな切ない胸毛!胸毛で泣く!いやほんと泣けるから!ケンカップルと胸毛が気になる方は読んでほしいです! それと続編があるらしい?のでそれも楽しみ。こんだけ蜜月になって次回またケンカップルなんかい!と笑いそうだけどそこはそのままケンカップルでいてほしい。

女は強くなるしかなかった時代の一作。

「謎めいた夜は公爵と探偵を」感想

「謎めいた夜は公爵と探偵を」感想/ベルベット文庫ヒストリカル
ケリー・ボウエン著

 初めに言っておくと私はヒストリカルがそんなに好きじゃない。特にイギリス、リージェンシーものが好きじゃない。デボラ・シモンズもクリスティーナ・ドットもエリザベス・ホイトもケリガン・バーンもローズマリー・ロジャーズも大好きだけどあの英国リージェンシー辺りのヒストリカル好きじゃない(意味不明)。
 そんな私が言う。この「チェガーレ・アンド・アソシエイツ」シリーズ、めっちゃ面白い。
 語彙?死んだ!はい死んだよ語彙死んだよ!
 面白かったです!!!!!

 深呼吸。
 ツイッターのTLで「帯」「帯www」「帯がすごい」と話題になってたんで本屋に行き私ももれなく「帯やな」って思った本だったんですけど。すげえっすわ。このダイレクトでインパクトある帯に内容全然負けてない。もうね、最初読み始めからぐいぐいくるね。容赦ねえ!ちょwwwページめくる手www止まらんwwwというツイッターの例の様式美かよ!てくらいぐいぐいくる。ミステリ入ってて謎解きも面白いし、ロマンスもいいし、何よりヒロインの有能さがたまらん!爽快感ぱねえ!ヒーローがちょっと霞む!でもこのヒロインに対しちょっとしか霞んでないヒーローむしろすごい!てかその霞み加減の塩梅がうま過ぎる!生理食塩水か!またも意味不明!!!!!
 いやすごいっすよ。伏線のうえに重ねられる伏線。そしてそれに上手く絡み合うロマンス。適度にヒロインの足を引っ張りつつ素晴らしく有能なバディであったヒーロー。ウイットに富んだ会話。魅力的な脇役たち。ええ、次回次次回の主役ですよねわかります!(次回作はよ!)4作目ヒーローは彼だろ!絶対に彼だろ!彼だと言って!!!!!!!あと妹もいつかヒロインになって!お願い!あと3作目のヒーローは彼らしいので、今作ヒーローの立場入れ替わってたしなめてやれ!3倍返しだ!
 最初に言った通りこの時代にほっとんど興味無くて、実際この時代にこういう職業とかあったのかどうか知らないんですけど、あっても無くてもこの話は素晴らしい。非常に良い!上手い。そしてもうたたみかけるような話の展開なのに決して浅くなくて良い!というかひとつひとつが練ってて意味があってすごい!語彙!無い!
 いや世のなかにはまだたくさん面白い小説がいっぱいあるね!でも私は英国リージェンシーもの好きじゃない。ツンデレか。きめえ。

存在意義を探る一作。

「夜の果てにこの愛を」感想

「夜の果てにこの愛を」感想/二見文庫
レスリー・テントラー著

 帯に「リンダ・ハワード好きならぜひ読んで」って書いてあったのと訳が石原未奈子さんなので入手しました。ちょっぴり騙された感。何故なら、リンダ・ハワードのロマサスみたいにヒーローが現役刑事だったり元軍人だったりFBIだったりカウボーイだったりスナイパーだったり

しない!!!!!!

めっちゃ一般人!上流階級!テラ普通の人!!!!!
いいかみんな!聞いてくれ!ロマサスって分かってるのにヒーローが一般人だったときの読んでる最中の恐怖感は五割増しだ!いざという時に確実にヒーローは役に立たない!(多分)むしろカンだけはいいからヒロインがピンチの時はああそうさ!確実にやってきてくれるさ!

だがそれだけだ!(暴言)

 ということでこれまためっちゃくちゃいい人ヒーローが謎のヒロインと出会って恋に落ちてトラブルに巻き込まれる話なんですが。
 ヒロイン、ヒロイン!ヒロインがなあああ~いや冷静に考えたら、そうせざるを得なかったのわからなくもないしばらく安全やったとしても出た瞬間に死ぬ!でもさあああ身分手に入れてとかそこまで頑張ったわりになんなこう!なんなこうさ!もうちょっとこうさ!いやわからくもない!物語的にはハラハラしてすげえ緊張感あった!そういう意味では面白い!でもなああああヒロイン!ヒロインがなあああ!でも個人の感想なんで!その辺りにこだわらない人ならむしろぐいぐいいける面白さだとは思う!しかし私はどうしても某所のヒロインの行動にあばばばばばとなってしまい完全に入れんかった!惜しい!
 物語的にはすげえ面白かったです。そんなんでヒロインのアレだけがどうにも受け入れられず、逆に受け入れろよ自分!とか思ってしまう。

「さがしものは慎重に、さもないと……?」という一文が冴えてる一作。

「朝まではこのままで」感想

「朝まではこのままで」感想/二見書房
シャノン・マッケナ著

 8作目になりヒーローの特異性がインフレしつつありますので、1作目のヒーローがめっちゃ普通ですやん!となってきた。そして安定の練られたロマサス。読む前は「いやああああこわいいいいい」ってなるのに読み終わったら「次回作はよ!」と興奮しているのも常。
 個人的に、サスペンス部分の恐ろしさは5作目が最高潮だったのか、あれ以来ページめくるの怖すぎってことはさほどなくなったけど怖かった。プロローグから怖い。いつもだけど怖い。読者の不安をあおるのうますぎ。あと最初の恐怖すら伏線に使いよる構成がもう神かと。毎回言っておりますが神かと。
 今作のヒーローは、前回作にてマクラウド兄弟を失意のどん底に陥れたにも関わらず本人は「そのくらいの作業でおんなのこのテンション上がってくれたらめっちゃコスパよくね?(超訳)」とだめ押しをかましてくれた根っからのおんなのこ大好き君なのです。前回にも過去がちらっと出てきてましたが、今作にはそれがさらに深く掘り下げられて帰ってきてます。そしてヒロインの状況と重なって進んでいくサスペンスとロマンス……おもしろい……ページめくる手が止まらん……こうね、そういうの現代の科学でまあできるって部分とここから先は完全創作ですよ、って部分の組み合わせというか混ぜ具合がほんとうに上手い。ある程度の創作は必要で、メイン設定の部分が少々荒唐無稽に思えるものだとしても、普段というか地の部分でしっかり現実のものの描写ができていれば、メインも受け入れられ生かされる感じがします。私は、土台設定で微妙な間違いがあったらちと萎えるタイプ。身内に同じ質問をしてみたら話が面白かったらそこは気にしないとも言い、それは確かにとも思う。確かに、よくネットで言われるジャガイモ問題とか、私はそもそも詳しくないのでジャガイモ存在しない時代にキャラがジャガイモ食べてても全然気にはならないけど、電子顕微鏡をポンポン屋外に持ち出され(そして使われない)たらめっちゃ気になる。つうことで、個人の知識差もあるし、全員納得させる話なんて作れない。それでも作者には読者をどこまで上手く「乗せられる」かという力量も必要だと思ってて、シャノン・マッケナさんはそういういい意味でのハッタリもめっちゃ上手いな、と思ってます。

 今回特記
・セス……名前だけ!でも名前だけでも……登場した!!!
・「バーボンにする?」←最高。笑ってないのもミソ。
・ヴァルの相変わらずの圧倒的イケメン感。でもよっわ!
・わかるロシアとウクライナとベラルーシの女子は妖精
・フォースと共にあらんことを←ネタバレ

夢でうなされてる屈強な男子に近寄るべからずという一作。
てか次回!もう買ってるけど遠い!最終巻出たらもう全部まとめて買う!!!!!

「営繕かるかや怪異譚」感想

「営繕かるかや怪異譚」感想/角川文庫
小野不由美著

 もうなんというか今更再認識するまでもないっつーかテストに毎回出てるつーか全世界既知というかなんですけど小野不由美のホラーは怖い。しかもものすごいこのそこはかとなく漂う怖さ?がすごい。動揺してすごい言い過ぎ。ぎいえああああああムリムリムリ!という怖さではないんだけど、ひゅっと怖さが通り抜ける感じがもうなんというか絶妙過ぎて、むしろ作者が普段どういう生活してんの?って観察したくなるレベル。どういうごはん食べてたらこういう腹八分目くらいの恐怖が描けるようになるん?不思議。

 そんなんでホラーなんですけど、ブログの分類作成で失敗かましたのでホラーに追加できないんでミステリーに入れてしまってるんですけどホラーです。さっきも言ったけどこのじわじわと、気付いたらそこにおったねん恐怖が!的な話の進め方がすごすぎて怖い。あ、話ね。そして短編集というか、小話がいくつか収められた本で、毎回主役は違うんですけど、題名にもなってる営繕屋さんが毎回出てくる仕組み。三話目くらいから、早い人だと多分二話目から、この人が出て来てくれたらもうホッとするのよ。そんだけ怖い。前置き怖い。そして最高に面白い。いやこの面白いって今更言う?手垢ついてるっぽいのに?もっとこの作品のすごさ、素晴らしさをテメエのありったけの語彙で表現してみ?って言われそうだけど、申し訳ない最高におもしろいとしか言えん。だってネタバレになるじゃん!(言い訳) あとここで吐いちゃうけど四話目の怖さはガチ。最高潮って感じのヤバさ。
 著者のホラーって、幽霊怖いの奥に本当に怖いんは生きてる人間やで?ってのをガッと出してきてあばばばばばばってなることも多いんですけど、そのカタルシスとしてきちんと「いろんな人間おるけど、人間まんざらでもないで」って魅せてくれるところが最高に好き。

 ここで言う?って言われそうだけど、秋の十二国新作もお待ちしております!!!!!

共に暮らしていく一作。

「残り香の誘惑」感想

「残り香の誘惑」感想/ハーレクインプレゼンツ作家シリーズ
ペニー・ジョーダン著

 ラブロマンスの醍醐味ってんで、ひとつにいろいろ条件とか重なって心のすれ違いでこじれるのもあると思うんですよ。今作はヒロインのいとこ、しかも諸事情で長年交流が無かったんで彼の邪悪さがわからなかったヒロインがちょといいように扱われれ、ヒーローがヒロインの性根を誤解して進むってやつです。美味しいです。アタイは!こういう!心根の清いヒロインが!状況とか悪意とかによって!ヒーローに悪いように!勘違いされてる!始まりのロマンスが!だいすっき!!!!!毎回言ってる!!!!!!!!!

 てなもんで、伝統と格式を絶対に残したい廉価版絶許ウーマンなヒロインと、貧富の差悩まず全ての人にいいものを体感してもらいたいマンなヒーローが対決するところから開始される。二人はその辺全然譲らない姿勢なんだけど、ヒロインの金困いとこが「そんなんはどっちでもいいからとりあえず金くれや」マンで二人に「お互い歩み寄ってる感じよ」って嘘吹き込んで、主役二人は「まーこっちの言うこと呑んでくれるなら」ってんでその辺話し合わずに会っちゃうのがミソ。二人とも惹かれ合ってるから、仕事の話していがみ合いたくない。しかももう譲ってくれてる(と思い込んでる)んだし。そういうフィルター無くなったら素直な二人はガンガン惹かれあってしまってラブラブモードに。この辺の構成とかほんっと好き。上手い。
 あと現代物ラブロマンスでは主役二人の職業とかも重要なキモになる場合も多いんですけど、そこも物語に添える色としてうまく使われているとすげえなあと楽しさ倍だと、個人的には思っておるんですよ。私がコンテンポラリ好きなのもそういうところがあると思います。

万物は流転する一作。