「恋人たちの航路」感想

「恋人たちの航路/シーサイド・トリロジー・スペシャル」感想/扶桑社ロマンス
ノーラ・ロバーツ著

 あの末っ子が帰っていた!同時に彼女もやっぱり帰ってきた。「お前もか」と思わず言ってしまう。いやまあ完全な想定の範囲内でしたけどね。
 いやそうですよね。あの三話目のあの終わりであっけなくおさらばなワケないっすよね。
 てなもんで我らが悩めるヒーロー、おっきくなって戻ってきたんですけど。相変わらず面白かった。主役二人のロマンスもすっげえよかった。そして三匹のおっさんになった元ヒーローたちも素晴らしかった。いやどんだけ堅いパンなんだよ。
 そう。画家になって故郷に帰ってきたヒーロー。ハイソなヒロインに出会うんだけど、今作の大好きなところは、そういう出生とか育った環境がめっちゃ違う二人が出会って惹かれて、意識のすりあわせでもしようぜってなったときに、何が好きかどっちが好きかとか話し合う部分があってですね。ヒーローが「犬派?猫派?」ってヒロインに前のめりになって聞いてて、ヒロインがどっちかというと猫って言ったらもうね、最悪か!みたいな態度をとったヒーローが、もとの三部作の内容と相まって面白くて笑い転げまして。もうこの辺ノーラ先生は天才よね、って思う。
 今作のさらにすごいよな、って思ったところなんですが、ヒーローの母親ですねえ。このトリロジー+スペシャルの諸悪の権化のヒーローお母さんなんですが。ヒトの醜悪な部分もさらっと描くよなあ、そしてえぐすぎないギリギリのライン?を責めてくるよなあと思う。ヒーローのおかあさん、基本何も満足できないタイプなんですが、ものすごい歪んでるのね。自分の子供でさえ幸せになるのが許せなくて、多分彼女はお金とかでなく、本当に他人が幸せなのが許せないんだと思うんすよ。自分が満たされないから他人も満たしたくない。このお方、自分の妹(=三作目のヒロインですな)のところに当時四歳の子供だったヒーローと乗り込むんですけど、ヒーローと妹が心を通わせ合うと、それが憎くて息子を連れてっちゃうんですね。正直、子供居ないほうが生きて生きやすいんちゃうの?って思うんですけど、子供(=ヒーロー)を置いていくと、彼らが幸せになってしまう、それがどうしても許せない。なんで、サンドバッグになる子供も結局、足手まといになると思うんですけど連れてく。このゆがみ具合がすげーよなーと感心しまして。子供かわいさでないんですよ。やっぱり人間が一番怖いよね、と思うよね。それだけじゃないんですけどね。そういう人間書いてしまうノーラ・ロバーツもまたすげえよな、と。
 ラストもねえ、再生も兼ねてるのかも知れないですけど、こういう大事なものスッパーンと切り捨てる潔さも、世界に愛される作家はやっぱりすげえよな、と思うわけです。
 シーサイド・トリロジーシリーズ、たいへんたのしゅうございました。

悪い人間のために自分の好きなことを諦めたら負けなんで戦おうぜ、という一作。

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