「悪魔に捧げた純愛」感想

「悪魔に捧げた純愛」感想/ハーレクインロマンス
ジュリア・ジェイムズ著

 今回は脱線気味の話から始めるのですが。
 新美南吉先生の「手袋を買いに」ってお話がありますよね。しもやけになった子狐が、お母さん狐に片手だけ子供の手に変えてもらって、人間のお店に手袋を買いに行くお話。好きな話なんですけど、私がだいぶ大人になってから、その話を読んだ対象世代の小学生の感想がいっとき話題になりまして。
「なぜ、お母さん狐は小狐の両方の手を変化させなかったのか」
 いやーいやーあのねいやーあのねうん、わかるよ、気持ちはわかる、そういうのも分かる。
 これはネットでもよく言われてるSFが衰退していった話とか、ナーロッパとか、広くはその辺も巻き込むネタだと思ってる。いやうん、わかるのよ。個人それぞれにこだわりとか思いとかあってさ。なんでそこそうすんの?って言いたくなる時もあるよね。そこが面白い所だとしても、いやそこなんでそうなの整合性なくね?ってつっこみたいときあるよね、わかるよ?
 でもさあああああああ〜という。

 で、今作の話なんですが。ヒーローが子供の時両親にほっとんど愛情かけられなかったんで、自分は同じことをしたくないってのが深層にあってさ、子供がどうしても欲しくないってずっと思ってて。そんなんで女性とか体を繋いでも心はアッサリな関係ばっかで。そんなおりにヒロインに出会うんですよ。のめり込んで、でも結婚はしたくない、子供なんて言語道断て、思ってるその、まさにその最中に!ヒロイン妊娠したかも?って相談されてですね!ヒーローが俺をはめたのか!ってキレる場面がありましてね。
 イヤイヤイヤ。キレたいのは読者ですがな。なんでヒロインにだけピル飲ませて自分生でやってん。そこまで子供欲しくないんならてめえも対処せえよスキン付けろよなんで生でやってん。あれか?ゴムのアレルギーか?だったらパイプカットせえ。ハア?それもいやなの?じゃあせめてヒロインに対してきちんとお薬飲めてる?とか体調どお?とか聞けよ。なんでヒロインが「あの時ちょっと時差でぼんやりしてたかも」って言ったら嫌味言うん?お前何様?体調気遣うことなくなにおしたおしてん?
 とまあブチ切れてたわけですが。で、ここでじゃあヒーローが完璧に対処してヒロインの妊娠の兆し全く無っしんグ!とかなったとしますと、話が進まんのですよこれが。全く話が進まんのですよこれが。

 ということで。いろいろ読んでて思うところもあるわけですが、こう必要悪?とまで言うと言い過ぎな感も否めませんが。盛り上げるためには多少の上げ下げも必要だよね、と今作を読んでしみじみと思ったわけです。そもそも今作のヒーローの、あのアホな嫌味が後になって非常にいい味を出してましてね。ついで言うと、その私がブチ切れたヒーローの行動も、ある人にとってはスルー可能というか気にならん事案ということもありえるわけでして。この辺は好みもあるんで、難しいですよね。
 しかも全体を通してこちらの話、さっきも言いましたがそのヒーローの行動がきちんと生きて上手い具合に進んでいるし因果応報な部分もすげえあったんで、全体としては完全に有りだと思うし面白かった。
 なげえ感想になりましたが海外ロマンスよきですよ。ツッコミ必至な時もありますが、その辺は文化も違うし、ゆるく「そういうこともあるんだ」くらいの認識で。

心の成長の一作。

「ナニーに天使の微笑みを」感想

「ナニーに天使の微笑みを/ホワイト・イブの奇跡」感想/ハーレクイン
リアン・バンクス著

 まごう事なき三部作の一作目ですね!ぐぎぎぎぎぎヒロイン妹とヒロイン兄の話も気になりすぎる!特に妹!どうなんのよ!
 日本という国で、皇族=神の扱いが過去にあったこの日本で、もう皇族つったら品行方正で間違った事なんてしなくて良き母良き父良き子供で……とか、もうアレよ悪い意味でも人間だと認識してんくて、でもおそらく日本人のほとんどはそう思ってて、小説読んでても、王族でたらもう=日本の皇族に対する、駄目な期待感?プレッシャーを与える期待感?を抱くんですよ、少なくとも私は。いや彼らだって普通の人間で、間違いもするし、感情もあるし、怒る事だってあるんですが、なんかこう「いやいやいやでも皇族だし?」みたいなフィルターをかけてしまう。よくないと思いつつ、やっぱ期待してしまう。ダメループ。
 そんなんで、こういう小説読んじゃうと「この王家大丈夫なのか……?」と心配というか不信感?みたいなの持ってしまう。しかしさっきも言いましたがおんなじ人間なんで、こういう普通のロマンスがあってしかるべきで、個人的にはこういうの読んで読んで読みまくって、現実の皇族にもそういう必要ないプレッシャーをかけないでいきたいとは思っている。
 で、話はというと、さすがリアン・バンクス。期待してたけど面白かった。いややっぱこういう人間くさい王族、読むべきよ。てか人間だもの。ファンタジーだろありえん!とか言われても、だがそれがいい!とか、そのくらいフランクでいいものよ、とか思えたらいいなと思う。そんな感じで読んでましたが、楽しかった。ヒーローの子供がものすごいいい味というかアクセントというか、うまく絡めてあって素晴らしい。ラストのシーンとかこれまでの流れから考えても美しい!とため息が出た。いい話だった。そして妹と兄よ……気になる。

人との関わりっていいなという一作。

「伯爵と雪の華」感想

「伯爵と雪の華/ホワイト・イブの奇跡」感想/ハーレクイン
ルイーズ・アレン著

 ヒロインの過去設定が凝ってて上手いと思ったのと、その設定で後半からのこじれ具合が非常によき!と思いました。わりとしつこく言っておりますがイギリスリージェンシーものがなんとなく苦手というか、いまいち入り込めないのが多いって感じながらも読んだら「面白いな!」て思うんで、これはアレだ、妙な苦手意識を何かしらで持ってしまったらしいんですが、そのきっかけがなんか思い出せない。それはともかく、実は大金持ち、しかも継いだとかでなく完全自力で儲けたヒロインが、ヒロインのお金目当てに男どもがやってくるのが鬱陶しくて、出会ったヒーローにはそんなにお金持ってない未亡人の態を突き通してたら最後は……という設定のお話でした。ヒロインの生い立ちというか今に至るまでの生きてきた様がなかなかにシビア。そりゃあ殿方に対してちょっと色眼鏡もかけてしまうわな、てなもんです。そのあたりの感情の持っていきかたがすごい良かったです。短めの話でしたがなんかドラマチックでダイナミックだった。

切り札は最後まで出さないのがセオリーな一作。

「真冬の千一夜」感想

「真冬の千一夜/ホワイト・イブの奇跡」感想/ハーレクイン
アビー・グリーン著

 こないだ出てた二部作の一作目にて意味深に出て来たヒロインのお友達。ヘイヘイヘイ、わかってんだぜスピンオフで出るんだろう?構わぬ遠慮せず出し給え!と待っておったら、こちらの短編で登場しました。
 アビー・グリーンにありがちすぎる、モテモテ大富豪ヒーローが女で痛い目にあって女遊びするようになって、女遊びに飽き飽きしてるところに颯爽とヒロインが登場し、ヒーローは「いやいやいやまあうん好きだよ?彼女のことは好きだけどそういう特別ってなんじゃなくてさあ」と余裕ぶっこいてたらヒロインに逃げられそうに……という例の流れですが、何度も言いますが、幼少の頃水戸黄門と暴れん坊将軍と好きすぎて様式美の素晴らしさにどっぷり浸かって来た私にこの「大筋で好きな流れをいろんなシチュで楽しむ」エンタメはもうある意味麻薬だったね!やめられないね!中毒だね!吉宗が「成敗!」って言うようにヒーローも最後は「愛してる」って言う。これですよ!これなんですよ!

 なんでこんな枕が挿入されてるかというと、物語がちょっと短くて感想書きにくいからなんですけど、やっぱアビー・グリーンも好き。世間的にはちょっとアレかも知れんですが、今作ヒーローは子持ちで、まだ学校入る前っぽい年齢程の実の娘がおりましてね。女性とは割り切ったおつきあいしかしてないのに、娘にメロメロでしてね。将来的には落ち着く予定かもしれんけど、娘がおってそれもどうなん?とは思いつつ、ことあるごとに友人に娘がいかにかわゆいか説いておって尊い。なにこのヒーロー、お前が可愛い。
 そしてですね。今作ではそのヒーロー娘がものすごくいいキャラでしてね。最後の最後でニヤっとさせられるキューピッドぶりよ。こういうの大好きなんで、そして短編でさらっと読めるのも良かった。楽しゅうございました。

ヒーロー娘がお利口で、将来普通に父の後を継いで社長とかになってそうな一作。

「聖夜のフェアリーテイル」感想

「聖夜のフェアリーテイル/ホワイト・イブの奇跡」感想/ハーレクイン
サラ・モーガン著

 できる女子三人が「アーバンジニー」という仕事を立ち上げて恋も成就するシリーズにて、二作目で登場した脇役が主役になっておりました。いや、このアップル気になってた。多分4作目くらいで出るんだろって思ってたら、こうして短編でお披露目されましたね。これはこれでよき。
 男の見る目が無いというよりは、経験不足で悪い男にひっかかってしまった頑張り屋ヒロインが、彼女の良さを十二分に理解している完璧な男=ヒーローに癒され愛され幸せになるロマンスで、まさにクリスマスにふさわしい内容になってました。てかクリスマス……もうすぐ夏も終わるというのに昨年のクリスマス特集今読んでる……積み本の多さがここで露呈。
 そして様式美になりつつある物語の導入。なんかすごくサラ・モーガンっぽい! いやしかしいいよねこういう、ずっと両片思いだった二人が、こういった小さなきっかけで坂を転がり落ちるようにロマンスが進んでいくの。たたた楽しい。そんなんで、こちら二人は仕事仲間で、現場ではそういう色を一切見せないけど、プライベートではじわじわ距離が近くなるのってのが美味しい。でもってヒロインが抱えてる問題も一緒に解決されてしまう展開が尊い。ヒーローがまた完全無欠ではないものの、ヒロインの苦悩をわかりつつも、その垣根をガッと蹴散らしてやってくるのがいいんすよ。道中で、ヒーローも悩んでいるのもまたよろし。
 ヒロインが連想ゲームで、単語を書いてくのにだんだん際どくなってくネタが好き。面白い。こういうオモロ設定をロマンスに繋げていくの、読んでて楽しくてテンション上がるよね。好き〜。

語彙増やす方法を真似したくなった一作。